ノミの投資家奮闘記

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サラリーマン投資家の米国株長期運用記  

Vodafone 40%減配について財務分析

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こんにちは!ノミの投資家です。

 

今年は買付けが全て完了しあとは配当入金を待って追加するかどうか考えるだけとなってしまい少々退屈しているこのごろです。そんな中、英国ADR屈指の高配当銘柄であるボーダフォン(VOD)40%の減配を行ったようで、VODは私も配当率に魅せられて一度検討したことがあったので、ちょっと記事を書きたいと思います。記事を書くといっても得意の財務分析で、VODが一体どのような財務状態だったのかを同業他社のAT&T(T)と比較して分析したいと思います。

1.Vodafoneとは

ボーダフォン・グループ: Vodafone Group Plc)は、イギリスに本社を置く世界最大の多国籍携帯電話事業会社である。2006年6月における市場価値は1340億ドル。1985年1月創業。Vodafoneは現在26か国に子会社があり、33か国以上にパートナーネットワークが存在する。社名の由来はVoice Data FONE (PHONE) に由来する。2012年にケーブル・アンド・ワイヤレスを買収した。

ボーダフォン - Wikipedia

Vodafoneはイギリスの携帯キャリアで多国籍に展開している企業ですが、30代以上の方はご存知と思いますが、実は日本でも2001年にJ-phoneを傘下に収めた後、2003年から2006年にソフトバンクに売却するまでの間Vodafoneブランドが存在していました。ノミの投資家も当時J-phoneVodafoneをキャリアとして使っていました。

2018年の一株あたり配当は1.17$でADRの株価約17ドル(19/5/15時点)に対して配当率が驚異の10%となっていました。日本でも馴染みのある企業でもあり、さらにこの高配当率につられて購入を検討もしくは購入された方も多いのではないでしょうか。

しかし、この度19年3月期の決算で赤字転落しさらに配当を40%減配すると発表しました。かなり経営的に苦しいと見られますが、実際に財務状況がどのようになっていたのかを見ていきたいと思います。

 英携帯電話サービス大手ボーダフォンは13日、2019年3月期の純損失が76億4,400万ユーロとなり、前期の27億8,800万ユーロの黒字から赤字に転落したと発表した。インド子会社と地場同業アイデアセルラーの事業統合に絡む減損処理が響いた。
 売上高は6.2%減の436億6,600万ユーロ。うち大半を占めるサービス収入は392億2,000万ユーロと継続事業・恒常為替レートベースで0.9%減っている。これを地域別に見ると、全体の7割以上を稼ぐ欧州は2.5%減少。中でもスペインが6.4%縮小し、イタリアは5.9%、英国は5.1%それぞれ落ち込んだ。半面、ドイツは0.5%のプラスを確保した。欧州以外の地域は6.1%増えている

【英国】ボーダフォン、通期は赤字転落(NNA) - Yahoo!ニュース

www.theregister.co.uk

2.収益性分析

まずは収益性です。ノミの投資家が考える収益性のポイントは2つで、売上と営業利益率です。売上は商品の販売力・供給力を見る指標、営業利益率は製品力と営業効率を見る指標です。

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 こちらはTの収益です。売り上げは緩やかに右肩上がり、営業利益率は2010~14年までは若干不安定でしたが、15年以降は15%近辺で安定してきています。ここ5年ほどは売上と営業利益ともに伸ばせており健全に事業拡大できていることが伺えます。この営業利益率15%というのは、日本のdocomoKDDIが20%程度なのでさほど高くはない水準です。(日本のキャリアが儲け過ぎだと思いますが、、)

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一方こちらはVODです。売上高は右肩下がり、そして営業利益率は1桁台とここ数年は非常に厳しい状況です。16,17年は最終赤字、18年は黒字転換できたものの、今回19年決算で再び赤字転落するという流れですので収益性の改善ができていない状態が続いていることが伺えます。かつては営業利益率を15~20%稼げていたのを見ると2013年以降に何らか事業の構造が大きく変化し、その後から苦境が続いていると考えられます。

3.キャッシュフロー分析

キャッシュフローは実際のお金の出入り実績になるので、費用の調整や在庫のやりくりなど多少お化粧のできる収益とは違い誤魔化しの効かない指標になります。

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まずはTのキャッシュフローです。携帯キャリアなので基地局などの設備投資やメンテナンス等に投資がある程度必要となりますが、営業CFが強くフリーCFを十分に生み出せています。営業CFマージンも25%程度と言うことなしです。

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こちらはVODのキャッシュフローです。2013~2016年までは営業CFの低下と投資増によりフリーCFがほとんど無い状態でしたが、17年以降は投資額も減りフリーCFを確保できる状態に回復しています。営業CFも29%と意外にも売上が減少している割にキャッシュは生み出せている状況です。

4.配当性分析

次に配当性を見ていきます。配当は長期投資家の精神安定剤であり資産増のための起爆剤になりますので非常に重要です。T、VOD一気に見てみましょう。

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TのEPSですが決して安定的とは言えませんが基本的には一株配当以上を確保できており安定的に増配も続けているので配当で株主還元するという明確な意思を伺えます。BPSも右肩上がりです。一方VODはEPSが致命的にに安定しておらずEPSが下がれば減配もされるため一株配当が全く安定していません。絶対的にそもそもの営業利益が低いことが原因です。またBPSも右肩下がりのため一株あたりの価値がどんどん減少しているということになります。これを見るだけでもVODに配当狙いで長期投資することのリスクの高さが分かります。

5.バランスシート分析

次にバランスシートで資産の動きをチェックします。

まずは負債の部です。

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Tの自己資本比率は30~35%で推移していますが、2014年以降は徐々に増加傾向で財務体質は改善方向です。自己資本比率の30%程度というのは高くはないですが、安定的に利益を稼げる状況なので負債比率が多少高くても問題ありません。一方VODは自己資本比率が高く50%程度で推移しており財務は健全ですが、14年以降は徐々に減少傾向です。

 

続いて資産の部です。

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Tの資産は2015年以降無形資産が大幅に増加していますが、これは恐らく企業買収によるのれん(のれん (会計) - Wikipedia)になると思われます。一方VODは流動資産が増加、無形資産が減少の傾向です。これは過去買収した企業ののれん償却が進みつつフリーCFを内部留保していっていると考えられます。これ自体は極普通のことなので特に問題はないですが、稼いだ現金は株主に還元せず内部留保してしまっているという点で株主還元に対する姿勢が見て取れます。

6.まとめ

以上のように財務状況を見るとVODは増配はおろか配当を維持するのも厳しい状態であったのが分かります。事業内容は分からなくとも財務状況を見るだけで投資不可の判断ができるんです(結果論ですが、、)。減配は配当再投資家にとっては配当減少と株価下落のダブルパンチを食らうので絶対に避けなければならない事態です。と、いろいろ偉そうに財務分析しましたが、実はノミの投資家はVODは携帯通信キャリアであることぐらいしか事業内容は知りません。

 

ノミの投資家は銘柄を選ぶ際、実は事業内容はあまり見ていません。大手有名企業か?どんなものを売ってるのか?ぐらいは見ますが、判断のほとんどは財務分析を拠り所にしています。極端に言えば事業の将来性や儲かるかどうか、地域ポートフォリオは盤石か、その技術は競争力があるかどうかなどは、その業界人や専門家でなければ素人ではよく分からず、素人目線で事業分析していくとミスジャッジをする可能性があります。事業がうまくいっているのか儲かるか否かは全て実績に現れてきますので、私は財務分析を最重要視しています。財務状況がしっかり読み込めればその銘柄が長期投資をするに足る銘柄かどうかが見えてくると思います。これからも財務分析をしっかり行い信頼のおける銘柄と出会えるように日々精進していきたいと思います。

 

上記は個人の考えになりますので、投資はあくまで自己判断でお願いします。

 

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