こんにちは!ノミの投資家です。
6/25の開場前にアッヴィ(ABBV)がAllergen(AGN)という会社を買収するというニュースが出ました。これによりABBVは15%近く値を下げる暴落に見舞われましたね。企業買収って買収側から見ると成長のタネとなり得るので、そうゆうリリースが出ると株価が上がりそうな気がしますが、割高で買収したり成長ドライバーとしては不十分だと市場が判断すると逆に株価は下がるんですね。ノミの投資家は暴落するとついつい反射的に買いたくなってしまうのですが、手元にあった1200ドルで我慢できずに買ってしまいました!笑
さて、ABBVホルダーのノミの投資家は、この買収については当然興味がありますので、買収でどのような効果がありそうか少し調べてみました!
と言っても、もみあげさんやたぱぞうさんが既にそれぞれの視点から素晴らしい分析をされていますのでこちらも是非ご覧下さい!(もみあげさん、たぱぞうさん、一部内容かぶってしまってすみません、、、)
また、ABBVの財務分析については以下の記事に記載していますので合わせてご覧ください。
目次
1.ABBVがAGNを買収
こちらが6/25のリリースですが、AGNを630億ドルで買収する予定とのことです。630億ドルって約6兆5000億円ですからどえらい規模の買収ですね!18年に、武田薬品が発表したシャイアーの買収も6兆8000億円規模でしたし、今月ファイザーが米アレイを買収したのも1兆2000億円でしたので製薬会社の買収は兆単位という巨額の買収になるんですね。ABBVはAGNを買収する際に45%ものプレミアをつけて買収すると言っていますので兆単位の巨額な値段にさらに非常に高いプレミアをつけるって余程ABBVはAGNを買いたかったんでしょうね!
2.買収の目的と効果
そのAGN買収について株主向けのプレゼン資料がHP上で出ていましたので、それを読んでこの買収の効果を見ていきたいと思います。以下挿入しているプレゼンは全てこの資料からの抜粋になります。
https://www.abbvie.com/content/dam/abbvie-dotcom/uploads/PDFs/allergan/abbVie-allergan-acquisition-investor-presentation.pdf
【買収の目的】
こちらに買収の目的と効果のサマリーが書いてありますが、要約するとこんな感じです。
・ABBVの商基盤とグローバルインフラの強みとAGNの美容健康維持セグメントの強みでシナジーが生まれる
・売上拡大により美容と神経系セグメントでマーケットリーダーとなり更に胃腸系および女性健康関連の特許を取っていく
・ヒミュラを除いた分野での成長市場での収益基盤を構築
・2023年のヒミュラのジェネリック化による収益減インパクトを和らげる。それまではヒミュラは引き続き強いCFを生み出し続けており2023年までに買収による負債を完済する
・買収によりEPSは初年10%改善し翌年以降は20%改善、強靭なCFで負債を返済していく。この収益性とCFの強さで配当は引き続き伸ばしていく
やはりCFの強さで2023年までに負債を返済するとハッキリ言っているところが信頼感がありますし、配当も伸ばすと言っているので配当狙いの人でも安心できるポイントかなと思います。また、特許もドンドン出願していくようなので、この買収によるシナジー効果は大きいと思われます。
【市場ポジション】
売上で見てみると業界内のポジションはABBVが9位、AGNが16位でしたが、この買収で一気に4位まで上がり、特許切れで売上減が懸念されているヒュミラの売上分を除くと買収後は10位の位置になるようです。
また、営業キャッシュフローではABBVは業界5位と強靭なCFを誇りますが、AGNも比較的CFは強く、2社合わせた新ABBVは業界3位の営業CFを誇る会社となります。元々ヒュミラで稼ぎまくっているABBVはこの基盤で金が稼げる内にポストヒュミラとなる事業の柱を確立したかったのでしょう。
【事業ポートフォリオ】
ポートフォリオは現在の強みである免疫系・血液系のセグメントも引き続き強化しつつ、AGNが強い美容健康維持系での販売を伸ばしていくようです。また現在はヒュミラ以外の成長分野は140億ドル程度の売上ですが、新ABBVでは2020年までに290億ドル規模まで拡大するみこみとのことです。これにより元々売上の60%を占めていたヒュミラの構成比は40%までさげることができます。
【B/Sに関して】
今回の買収のために380億ドルはモルガンスタンレーとMUFGから借入することで合意いているようですね。そして強靭なCFをさらに強化し、配当についてもさらに増配していくことをコミットしています。また信用格付けもBaa2/BBB以上をキープし、負債も2021年までには150~180億ドルまで減らし、2023年までには完済する見込みです。
以上が買収の目的と効果になりますが、明確に負債返済期限や配当増配の意思を示しており、また事業分野についても戦略的にポートフォリオを構築していることが分かります。
3.AGNの財務分析
【収益性分析】
売上は年々伸ばしてきており販売力・商品力の強さを物語っていますが2015年以降はやや停滞気味に推移しています。一方営業利益率は非常に低く、2012年ごろまでは10%程度であったのに対し2014年以降は売上の拡大に対し利益が伸びていません。恐らく売上伸ばすためにかなりの費用をかけて販売を強化していたのではないかと推察します。またABBVはプレゼン資料なかで費用を効率化していくと謳っていますので、費用改善で利益改善を目指していくものと考えられます。
【キャッシュフロー】
利益の低さに比べると営業CFは非常に優秀で営業CFマージンは35%と驚異的な数字となています。営業利益は低いので販売に費用はかかっているが手元にキャッシュを多額に残せる強さを持っていますね。ABBVがCFについて自信を持っているのはAGNのキャッシュが強いところも背景としてあると考えらえます。
【配当性】
営業利益が低いことでEPSはボロボロなのですが、意外とBPSは年々増加しています。これは潤沢なキャッシュフローも背景としてありますが、AGNは株式を追加発行して自己資本を調達しておりそれがBPSを引き上げている主要因と思われます。
【バランスシート】
資産は大半が無形資産となっています。一方負債の部では自己資本比率が64%に達しています。追加株式発行で自己資本を調達し、またそれと並行して売上が拡大しているので、調達した資金を特許や企業の買収に回していることで無形資産が増えているのではないかと考えられます。この無形資産の中にはもしかすると金の卵が入っていてABBVはこれらの特許価値などを評価して45%のプレミアをつけているのかもしれません。
4.まとめ
以上、買収の目的と効果、そしてAGNの財務分析になりますが、ノミの投資家の考えとしてはこの買収は非常によく戦略を考えられていて、確かに45%のプレミアの%自体はかなり高いと思いますが、逆にそれほどのプレミアを払ってでも他社に取られたくないほどの価値のある企業だということも言えると思います。ポートフォリオや市場性については薬品業界の人でもない限り、正直素人がいくらいろいろ考えてもハッキリ言って全然分かりませんし、素人の知識で勝手に判断してもジャッジミスになる可能性もあります。なので、事業分析はあまり気にしないのがノミの投資家スタイルですが、財務分析を見るとやはり無形資産が多い部分でかなり価値のある特許などを抑えている可能性は高いかなと考えます。そしてAGNのCFが強いところもかなり魅力だと思います。そして重要なポイントとして、ヒミュラの特許切れについては何年も前から分かっていることですが、ABBVはちゃんと将来を見据えて戦略を立て、リスクを取って動いているということが分かりました。製薬会社は今後も買収を繰り返しながら成長していく必要がありますが、今回の買収でCFが更にめちゃくちゃ強くなるのは今後の新たな買収を考える際にも強力な武器になることは間違いありませんので、そうゆう意味でも、この買収は必要なことだったんだと思います。
ノミの投資家としては今後もABBVには継続して投資していくつもりです。
この見解はあくまで個人の見解になりますので、投資は自己判断でお願いします。